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小説

映画青年(13)

※KDPで出版したため削除。 藝術青年 作者:杉本純 Amazon

映画青年(12)

※KDPで出版したため削除。 藝術青年 作者:杉本純 Amazon

映画青年(11)

※KDPで出版したため削除。 藝術青年 作者:杉本純 Amazon

映画青年(10)

※KDPで出版したため削除。 藝術青年 作者:杉本純 Amazon

映画青年(9)

※KDPで出版したため削除。 藝術青年 作者:杉本純 Amazon

映画青年(8)

※KDPで出版したため削除。 藝術青年 作者:杉本純 Amazon

映画青年(7)

※KDPで出版したため削除。 藝術青年 作者:杉本純 Amazon

映画青年(6)

※KDPで出版したため削除。 藝術青年 作者:杉本純 Amazon

映画青年(5)

※KDPで出版したため削除。 藝術青年 作者:杉本純 Amazon

映画青年(4)

※KDPで出版したため削除。 藝術青年 作者:杉本純 Amazon

映画青年(3)

※KDPで出版したため削除。 藝術青年 作者:杉本純 Amazon

映画青年(2)

※KDPで出版したため削除。 藝術青年 作者:杉本純 Amazon

映画青年(1)

※KDPで出版したため削除。 藝術青年 作者:杉本純 Amazon

名前のない手記(26)

禍々しい事件現場を見た時、私の心は大きく、深く陥没していった。取り返しのつかぬ事態に身を震わし、目を瞠った。名状しがたい、黒い波のようなものに意識がさらわれ、その場に立ち尽くした。 それでも思考は正常に働いたのだろう。私は慄然としながら、そ…

名前のない手記(25)

〇 私は今、金本旅館の一室で筆を執っている。九月になったが、暑さは一向に衰えを見せない。周りは静かである。筆を執っている間に、労働者たちは日雇いの仕事を終えて帰ってきて、酒と肴を食らって寝た。彼らとは変わらず意味のない言葉を交わすが、もはや…

名前のない手記(24)

〇 傍から見る分には解らなかったが、それ以来藤田君は明らかに変化した。毎日必ず日雇いの仕事へ出るだけでなく、パチンコへ行く頻度が落ち、酒量も減った。私の言葉が何かの決め手になったとは思えない。ただ、ぼんやりと未来につなぐ何かが心の中で萌した…

名前のない手記(23)

「ん? どうしてですか?」 藤田君は目を丸めた。私は声を落として言った。「こんな都会の掃き溜めのようなところで大切な時間を浪費するものじゃないよ。オレは正真正銘の落伍者だが、君にはまだまだ可能性がある。こんなところで過ごして将来を棒に振って…

名前のない手記(22)

〇 それから数日後、タレントの酒井法子が逮捕された。覚せい剤取締法違反容疑とのことだ。藤田君と同じように「魔が差した」のである。しかし人間である以上、魔が差さぬことなどあろうはずはない。大切なのはどのように魔を飼い馴らして生きていくかという…

名前のない手記(21)

笹本は名を司といい、歳は四十代の半ばということだった。藤田君が勤めていた家電量販店で店長をしていた。笹本が藤田君に語ったところによれば、藤田君が派遣切りに遭ったすぐ後に店は経営上の理由により閉店。笹本も職を失った。クビである。その後、都内…

名前のない手記(20)

翌日、私が日雇いの仕事を終えて帰ってくると、なんと藤田君はまだ寝ていた。おばさんが言うには、日中に数度、起き出してきてはトイレで激しい嘔吐を繰り返していたとのことだ。昨夜は相当な量を飲んだようだ。 私はいつものようにドヤ街の通りで住人たちと…

名前のない手記(19)

〇 私は乱闘騒ぎの直後、藤田君を見つけた。藤田君は顔を紅潮させ、走りつかれて住宅街のゴミ置き場で倒れて眠っていた。「愚かな男だ。このまま死んでしまった方がどれだけマシか解らない」 私はそう思った。そして、そのように思って見棄てておけばよかっ…

名前のない手記(18)

「バブル」。そうなのだ。奴らのもう一つの共通項は、戦後すぐか高度成長のただ中に生まれ、バブルの絶頂へ向かう「日本の上昇気流」をもろに浴びて育った世代であることだ。奴らにとっては「明日はもっと良く」ならなくてはならず、働く者はすべからくその…

名前のない手記(17)

〇 ここで、藤田君と数ヶ月の間、生活を共にしていた中年男の笹本のことを補足しておく。この男のことなど書きたくもないが、藤田君の名誉のために多少は紙面を割いておく必要がある。 ホームレス連中と見物客との乱闘の引き金を引いたのは、明らかに笹本で…

名前のない手記(16)

藤田君は殺気に満ちた目を男に向けると、逆に男のシャツの襟を掴んだ。体をのけぞらせ、男の鼻をめがけて思い切り頭突きを食らわせた。鈍い音がした。私は無言のまま大口を開けた。とんでもないことが起きたと思った。男は鼻から大量の血を噴き出して倒れた…

名前のない手記(15)

がんばって桜橋の方まで行こうと、人ごみをぬって歩いていたら、どこかから人の叫び声が聞こえてきた。なにごとかと思ったが、喧嘩だろうと合唱だろうと、このような夜ならさして珍しくはない。無視して行き過ぎようとしたが、「ホームレス!」だの「難民!…

名前のない手記(14)

〇 それからというもの、私の中での藤田君に関する感情の起伏は消え失せた。夜の酒、寝床の書籍を友に、私は夏を過ごした。藤田君のことは思い返すこともなかった。 今思い返してみると、藤田君と笹本は夏の間、ずっと隅田川べりで暮らしていたのであろう。…

名前のない手記(13)

すっかり長くなった髪をダラリと下ろしていて別人のようだったが、藤田君に違いなかった。酒に頬を赤らめていた。すっかりマイケル・ジャクソンになったつもりでいるのだろう。「Who's Bad!」とはマイケルの楽曲「BAD」の歌詞の一部である。マイケルと街のな…

名前のない手記(12)

高層ビル群が雨上がりの西日を浴びて橙に照っていた。雨上がりのトワイライトタイムほど素敵な時間はない。私は心を小躍りさせながら日本堤から隅田川までを歩いた。川べりまで出ると、桜橋を目指してぶらぶらした。 ここは東京有数のホームレスたちの住処で…

名前のない手記(11)

それきり、藤田君とも連絡が途切れてしまい、数ヶ月が過ぎた。私はこれまで通り金本旅館に暮らし、日雇い労働を続けた。昼は建設現場で砂埃にまみれ、夜になれば酒をあおり、金が貯まれば風俗店へ出かけて女を買う。そしてただ時間ばかりが過ぎていく。その…

名前のない手記(10)

日比谷公園での暮らしはそれから数日間つづき、年明け早々に派遣村は閉じた。その数日間、私は藤田君と中年男の姿を見ることなく過ごした。 派遣村を後にした私は山谷へ帰り、再び金本旅館に入った。以前とは違う部屋をあてがわれた。山谷のドヤは人の入れ替…